出版社内容情報
受胎告知からゴルゴタ、復活まで、「その人」の生涯を十五枚の名画とともに辿る、美麗な画文集。著者が心に育んできたイエス観のすべて
内容説明
ゲッセマネでの夜、死の不安に脅え、血の雫のような汗を滴らせて、呻き呻き「思召成れかし」と祈るイエス。手足に釘打たれ、死に至る六時間の苦しみに身を引き裂かれながら、なおかつ裏切った弟子たちの赦しを神に請うイエス…。ジオット、ベラスケス、ルオーなどの名画とともに、その人の生涯を辿り、「愛」の意味を探る画文集。
目次
受胎告知―フラ・アンジェリコ「受胎告知」
クリスマスの夜―マサッチョ「東方三賢王の礼拝」
ナザレのイエス―ラトゥール「仕事場のイエスとヨセフ」
ヨハネの洗礼―ピエロ・デラ・フランチェスカ「キリストの洗礼」
悪魔の誘惑―コンラート・ヴィッツ「聖ペトロの奇蹟の漁獲」
カナの結婚式―ゲラルド・ダヴィッド「カナの婚宴」
ガリラヤの春―ルドン「キリストとサマリヤの女」
北方への流浪―ジョヴァンニ・ベリーニ「イエスの変容」〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
362
「受胎告知」から「イエスの復活」まで、イエスの生涯を15枚の絵画とともに辿る連作評伝。特筆すべきは、ここに描かれるイエスは神格化されたそれではなく、あくまでも「人間」イエスの事績が聖書(主として共観福音書)を拠り所に語られていることだ。このことを顕著に物語るのが、「ゴルゴダの丘」の章の磔刑図である。ここで選ばれているのはベラスケスの「十字架のキリスト」。わずかに光背こそ見られるものの、まさしく人間イエスだ。また、そこには終生カトリック信徒であった遠藤周作の解釈も見られるが、それは深い共感に発している。2018/08/22
新地学@児童書病発動中
103
イエスの生涯を西洋の名画とともに語ったエッセイ。エッセイは遠藤氏の他の著作と同じように裁く神ではなく、愛を語る神としてのイエス像が描かれている。ここに収められている絵はすべて見ごたえがあり、選び方に遠藤氏の信仰心の深さを感じる。最後の晩餐の場面に有名なダヴィンチの絵を選んでいないことに好感を持った。イエスの復活の場面ではルオーの「郊外のキリスト」が選ばれている。しみじみとした情感の漂うこの絵には、遠藤氏の言う母なる神としてのイエスが表現されたもので、私の一番の好みだった。2014/12/10
Die-Go
46
図書館本。『名画・イエス巡礼』の文庫版。数々の名画を元に遠藤周作がイエス・キリストの生涯を読み解く。感想は『名画~』の方に書いた。文庫版ではやはり名画のサイズが小さいのだけど、鮮明度は逆に高い。★★★★☆2018/09/03
ヨータン
18
十字架にはりつけられる箇所よりも弟子たちや民衆の裏切りの箇所が読んでいて一番辛かったです。弟子に裏切られ、死刑になるというわかっているのに弟子に向けた赦しの眼差し、弟子たちはさぞ罪悪感に苛まれたことと思います。キリストの偉大さを再確認しました。2018/09/04
金吾
17
絵画を紹介しつつ、受胎から復活までのイエスの生涯を書いています。簡潔でわかりやすい本だと感じました。ペトロの否認の遠藤さんの解釈は良かったです。2020/11/10
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- 和書
- 人工心臓に挑む 中公新書