内容説明
経済学者として優れた業績を残した著者は、昭和7年から同22年にかけて慶応義塾の塾長を務め、誰からも敬愛された大教育者であった。本書はその小泉が「平常心づいていること」を、平明にして力強い文体で記した珠玉の人生論である。晴雨を問わぬ誠実と勇気を説く各篇は、英国流の爽快なスポーツマン精神に根ざし、読む者の品格と気骨を陶治する。
目次
イエス、ノオ
人の幸福
論争と勝名乗り
亡友の遺児等
池田成彬
ジョナサン・スウィフト
鴎外の「智慧袋」
老年と青年
病めるもの、貧しきもの
風俗叱正
言語の正確
漢字の制限の原理
人工的インスピレエション
国土の姿
忠(ロヤルティ)
福沢諭吉の帝室論
これからの皇太子殿下〔ほか〕
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
15
著者の生き方がよくわかる内容だった。著者は今の天皇の教育掛として尽力されただけあり非常に好人物な印象をもった。本の内容は今(当時?)の日本の問題について著者の意見を述べたりしていたが、印象的だったのは文語体を推奨していたことだ。現代仮名遣いも戦後出てきたものだと実感した。2011/03/10
とし
6
大学の先生に説教されてる感じで、なんだか心地よい感じ。こういう心構えを説ける人は今はあんまりいないよなぁ。 そういう意味でも、たまに読んで自分の襟元を正したいと感じた。2019/03/16
Yoshio
5
反共産主義で鳴らした慶應義塾大学塾長。 簡潔で分かりやすい、偉ぶらない、文武両道の人。保身、軽佻浮薄、セルフスポッティングを戒める。森鴎外は文芸には非凡の才能を発揮したがノウハウ本は小役人根性丸出し、と容赦がない(笑) 社用族、灯台守のほか、福沢諭吉が子に課した『おさだめ七条』(P50)の話が印象に残った。 うそをつくべからず。 ものをひらうべからず。 父母にきかずしてものもらうべからず。 ごうじゃうはるべからず。 兄弟けんくわかたくむよう。 人のうはさかたく無用。 人のものをうらやむべからず。2018/07/25
式
4
身近な行動のことから説き起こし、池田成彬、スウィフト、鴎外、福沢等の逸話、仮名遣いや文章論、十八番の共産主義批判などに及ぶ。また、東宮時代の上皇の印象について書かれているのも中々面白い。心がけに関することだけでなく、シェリー酒や灯台守など微笑ましい挿話もある。流石は小泉信三、平易な文章で日常的な題材が主眼にあるが、平べったいつまらない文章ではなく、古今東西に及ぶ教養を動員した飽きないエッセイ。 2022/12/03
小皿
4
もとは1950年代に書かれた文章らしく、ちょっと古めかしい部分もあるけど、著者の、曲がったことが嫌いで道理を重んじる姿勢とか、日本をよりよい国にしたいという熱い思いがまぶしかった。2022/08/14