内容説明
古代人は狐や鳥の鳴き声に予兆を探り、それはまた、天上界の神が動物となって人間に幸福をもたらすという考え方とも通じた。本書は、白鳥、蛇、鹿、鵜、狐、鮭、熊などの野生動物の生態を通して、神と人間と動物の三者が織りなす親和力の世界を克明に描き出したものである。山林の伐採などにより、山野に住む生き物たちとの共存の場を失ってしまった神を畏れぬ現代人への鋭い警鐘をともなう、谷川民俗学の新しい境地を拓いた意欲作。
目次
遠野から―プロローグ
霊界をはばたく使者―白鳥
海を照らす神(あや)しき光―海蛇
海神(わたつみ)の娘―鮫
もの言う南海の人魚―儒艮(ジュゴン)
狩りに騒ぐ太古の血―鹿
黄泉への誘い鳥―鵜
不死と再生の象徴―蛇
狩言葉に満ちた世界―猪
葛葉の神秘と幻想―狐
北の異族の匂い―鮭
荒ぶる山の神―熊