出版社内容情報
「ソ連とはなにか,そしてソ連はどこへ行きつつあるか」という原題をもつトロツキー(一八七九―一九四〇)のこの著作は,ソ連成立当初の諸理念がスターリン体制によっていかに変質させられたかを究明し,第二の革命をよびかけたソ連研究の古典(一九三六).自由選挙,複数政党制,経済民主主義の問題等今日も示唆に富む論点が提起されている.
内容説明
この著作は、ソ連成立当初の諸理念がスターリン体制によっていかに変質させられたかを究明するとともに、第二の革命をよびかけたソ連研究の古典。自由選挙、複数政党制、経済民主主義の問題等今日も示唆に富む論点が提起されている。
目次
1 なにが達成されたか?
2 経済の発展と指導のジグザグ
3 社会主義と国家
4 労働生産性のためのたたかい
5 ソヴェト・テルミドール
6 不平等と社会的対立の増大
7 家庭、青年、文化
8 対外政策と軍隊
9 ソ連とはなにか?
10 新憲法の鏡に映ったソ連
11 ソ連はどこへ行く?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobody
14
「コルホーズ農民が指導者たちのためにクレムリンの祝賀会に送りとどける名誉ある『贈り物』は、かれらが地方の権力の代表者にささげる非象徴的な貢ぎ物の象徴的な表現でしかない」「村の『共同体』の家父長的な諸条件の中で育成されたロシアの昔の兵士は、盲目的な群衆心理をなによりの特徴としていた」といった調子の3〜4行の一文、一読何をいってるのかさっぱり判らない。単複重文構造から捉え直す。これを400頁。加えて修辞的にカッコつけるための凝った言い回し(既成事実を「〜とすれば」といったり「〜なのもいわれがなくはない」など)2020/06/28
壱萬弐仟縁
11
1971年初出。Ⅵ章「不平等と社会的対立の増大」は重要。「長期にわたって不平等が歴史的に不可避であることを理解していたとしてさえ、不平等に、未解決のまま残る」(160頁)。恣意的な特権によって拡大された不当な賃金格差の結果、官僚はプロレタリアートのあいだに鋭い対立をもちこむことに成功する(166-7頁)。現代もまた、賃金格差は正規/非正規で拡大。同じ職場であっても。だから不機嫌。賃金、価格、租税、予算、信用のような梃子は官僚の手に握られている(173頁)。官僚は184頁に書いてあるように、贅沢。出納簿?2013/08/31
荒野の狼
6
本訳書は、窓社版「ソ連はどこへ」より、1991年に刊行されたばかりのモスクワ版とスローヴォ版からの情報により改訂して岩波文庫より1992年に出版された。1940年に暗殺されたトロツキーが1936年に執筆し著作で、この時点までのソビエトを分析している。立場はマルクス・エンゲルスの共産主義の発達の理論に忠実で、レーニンの思想・政治に理解を示している。2019/04/21
それん君
5
トロツキーが言ってる下の文章って今のEUの形に似てるような気がした。→p293「ヨーロッパのプロレタリアートの課題は国境を永久化することでなく、逆にそれを革命的に撤廃することにある。ヨーロッパ社会主義合衆国」読んだけど難しかった。もう少し勉強してから再読する。2017/02/09
Masashi Onishi
5
何が裏切られたのか?「プロレタリア独裁の体制はそもそもの誕生から、国家であることをやめる。権力は武器とともに直接勤労者の手に移る。官僚機構としての国家はプロレタリア独裁の初日から死滅し始めるこれが綱領の精神である」はずが、「国家は死滅しなかったばかりか強制の機構へと肥大化した。官僚は大衆に席を譲らず、大衆の上に君臨する権力へと転化した。軍隊は人民に置き換えられるどころか、特権的将校階級を産み出した。」ここに約束が違うじゃないか、我々は裏切られたんだ、という敗北した革命家の悲痛な叫びを聞く。2015/01/24