出版社内容情報
革命期にパリで刊行された思想小説.悪徳にすすんで身を任せてまんまと出世を果たす姉ジュリエットと,美徳を愛するゆえに悪徳に迫害されつづける純真な妹ジュスチーヌを対照的に描く.本邦初訳.
内容説明
孤児になり、修道院を追われたジュリエットとジュスチーヌのふたり。姉はその美貌を利用し、すすんで淫蕩に身を任せ、まんまと出世を果たすが、純真な妹ジュスチーヌは、美徳をかたく守りつづけたために、くりかえし悪徳に迫害される。本書は革命期に刊行された思想小説で、サドが初めて世に送った作品である。本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
30
澁澤龍彦譯と併用して読了。こちらが行為の残虐さは伝わるものの、さらりと押し進められているのに対し、本書は描写の事細かいこと、これでもかと次々描かれる残虐さに辟易するほどでしたが、ここは読み手の感受性によるものでしょう。いつ事切れてもおかしくない責め苦に耐える彼女に、反撃してよ、いっそ道を外れて下劣極まりない野郎どもに復讐してよと思い至るほどでしたが、これはそういうお話ではありません。「美徳」を貫くとはそんなにも己を犠牲にして守らねばならぬものかと。・・・そうなのかもしれないけど。2018/08/08
めんま
23
美徳に生きることを信条とするジュスティーヌに降りかかる悪徳の責め苦を延々と描く小説。盗賊から人殺し、悪徳司祭など個性豊かな悪人が登場し、行われる凌辱・責苦もヴァリエーション豊富である。2021/10/03
壱萬弐仟縁
14
1791年初出。「罪悪がもたらす幸福は錯覚にすぎず、見せかけでしかない」(30頁)。いつかは、罰が当たらないと自戒、自省しない。「神さまが私の人生をつらいものになさるのは、もとすばらしい来世で埋め合わせてくださるためなのです」(58頁)。これは、最近そう思う機会がある。この逆よりはマシか。現世と来世は真逆か。「祈りは、不幸な人間になによりやさしい慰めとなります」(102頁)。そうだな。幸福な人は祈りは不要と高飛車になりかねない。「人間の虚栄心や錯乱は自然の法則になんの変化ももたらさない」(133頁)。2013/10/09
玉子
8
滅茶苦茶面白かったけど痛い!痛いよ!とにかくおまたがキュッ!段々ヒロインにイライラしてくるけど私騙されない!でもやっぱイラつくわ……サド自身肛門性交が好きだったらしいけどあんな不潔な時代に痔持ちとかぞっとするよね。ああおぞましい!テンション高いけど登場人物皆雄弁だしまじ何これやばいって感じだしほんと声に出して読みたい小説ですね!とすっかりどハマリしちゃってアヘ顔ダブルピースだけど私はノーマルなのがいいです。いやこんな面白いとは思わんかった!2011/06/11
ゆとにー
6
鳴り止むことのない瀆神論のカノン、飽くことなく繰り広げられる淫蕩の狂宴。 美徳の体現者(作者にも美徳にも都合のよい体現の仕方であるが)であるジュスチーヌが、身の上に降りかかった不幸を語るのだが、不幸をもたらした悪辣極まる男たちの行為と無神論を滔々と語るその仔細さ、博覧強記ぶりは、娘の語りを食い破るほどの質量を持っている。美徳の信仰を称揚する序文で始まっていても、娘が片言隻句漏らさず語る、放蕩者たちの無神論の方に比重があることは明白に思える。出会う人物ひとりひとりに娘がそれまでの経緯を余すところなく語り、2023/06/29