内容説明
犬は教えてくれた、人は生き直せることを…。日本で初めて、刑務所で盲導犬候補の子犬を育てる試みが始まった。犬との日々は人々をどのように変えていったのか。動物との絆に秘められた可能性とは。この試みの立ち上げから7年以上にわたって取材を重ねてきた著者が綴る、希望の書。
目次
第1章 日本初のプログラムができるまで(パピーユニット;島根あさひ社会復帰促進せんたーはどんなところか ほか)
第2章 春―パピーとの出会い(パピーたちがやってきた;犬のいる生活 ほか)
第3章 夏―刑務所で犬を育てるということ(三か月めの危機;一人いなくなった ほか)
第4章 秋―再生の始まり(盲導犬歩行体験;オーラの隠し芸 ほか)
第5章 冬―犬たちの旅立ち(カウントダウン;ひと足先の修了式 ほか)
著者等紹介
大塚敦子[オオツカアツコ]
フォトジャーナリスト。上智大学文学部英文学科卒業。パレスチナ民衆蜂起、湾岸戦争などの国際紛争の取材を経て、死と向きあう人びとの生き方、自然や動物との絆を活かして人や社会を再生する試みなどについて執筆。島根あさひ社会復帰促進センターの盲導犬パピー育成プログラムアドバイザー、法務省「少年院における動物(犬)介在活動等検討会」委員(平成24‐26年度)も務める。『さよなら エルマおばあさん』(小学館)で、2001年講談社出版文化賞絵本賞、小学館児童出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小梅
105
戌年に犬本5冊目。 日本で4番目の「PFI刑務所」である島根あさひ社会復帰促進センターで初めてパピーウォーカーをした経緯を記録した本。刑務所で盲導犬候補の子犬を育てるパピープログラムが始まった。地域のボランティアが週末パピーウォーカーとして、他の犬との合流や沢山の人のいる場所に慣れさせたりする。塀の中と外でパピーを通して手帳に連絡事項やパピーの様子を書いて連携体制で育てる。 とても素晴らしい試みだと思いました。2018/01/22
美登利
92
図書館員さんのオススメ本。タイトルで、今はこういうプログラムが有るのだと初めて知りました。著者がアメリカで取材して本を出版してから、パピーを育てるプログラム作りに参加して、様々な人たちの力をかりて日本で立ち上がったシステム。受刑者たちの更生の為に、動物との関わりは非常に力になるのではないかと強い気持ちが見事に伝わり、その後は改変しながら少しずつ再犯率が減りつつあることに成果が出ています。まだ赤ちゃん時期の犬を24時間体制で育てること。大変だけどみるみる変わっていく訓練生たちの姿に思わず笑みが広がります。2016/03/23
kinupon
83
すごいことだと思います。制約のある場所でこれだけのことが出来るなんて画期的です。半官半民だからこそ出来ることもあるんですね。日本の更生保護の在り方を考えさせられました。2018/10/01
miww
73
とてもいい本でした。刑務所でのパピープログラムについてのノンフィクション。刑務所にこのようなプログラムがあるのは知りませんでした。訓練生(受刑者)が点字実習を受けながら盲導犬候補の子犬達を育てる。自ら希望してこの試みに参加し、やがて相手を思いやり慈しむ人間らしい気持ちを取り戻していく。自分が何かの役に立っている実感を得てパピーに愛情を注ぐ姿に動物と過ごす影響力を感じます。盲導犬ユーザーの言葉「自分で自分の居場所をつくるというのは、自分にできることは何かを探すこと‥」全ての人の心に残るメッセージ。2016/06/13
kinkin
67
受刑者が盲導犬を育てるプログラムを島根にあるPFI刑務所を例に紹介されていた。受刑者たちがグループを作り仔犬から成犬にするまでの過程とが様々な事例ととともに書かれており、文章も平易で読みやすかった。動物たちとふれあうことで希薄になった人間関係や、チームワーク、なにより受刑者たちの心もしだいにほぐれてくるという。動物に癒される人、そこで育てられた盲導犬とともに生活をする人、犬が人々の関係をつなぐ動物として紹介されていた。このようなプログラムはこれからの更生の一環としてもっと普及すべきだと感じた。2015/08/15