出版社内容情報
二七年間の牢獄生活の後、アパルトヘイト撤廃に尽力、一九九四年に南アフリカ共和国黒人初の大統領となったマンデラ。不屈の生涯ゆえ「聖人」視されることも多いが、実際は冷静なプラグマティストだった。偏狭な国家主義と分断が再び広がる時代に、想像を超える「和解」を成し遂げた類まれな政治家の人生を改めて振り返る。
内容説明
二七年間の獄中生活の後、アパルトヘイト撤廃に尽力、一九九四年に南アフリカ共和国黒人初の大統領となったマンデラ。不屈の生涯ゆえ「聖人」視されることも多いが、実際は冷静なプラグマティストだった。偏狭な国家主義と分断が再び広がる時代に、想像を超える「和解」を成し遂げた、類まれな政治家の人生を改めて振り返る。
目次
第1章 首長の家に生まれて
第2章 プラグマティストという天性
第3章 非暴力主義という武器
第4章 民族の槍
第5章 「誰もが彼に影響された」
第6章 老獪な「聖人」
終章
著者等紹介
堀内隆行[ホリウチタカユキ]
1976年京都府生まれ。1999年京都大学文学部西洋史学専修卒業。2009年同大学大学院文学研究科より博士号取得。日本学術振興会特別研究員、新潟大学准教授を経て、金沢大学歴史言語文化学系准教授。専攻は南アフリカ史、イギリス帝国史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
102
私は感激屋で、単細胞のバカである。そんな私は、マンデラ氏を無条件に尊敬する。貫徹した強い意志、看守をも虜にする人間力、虹の国の理想、真実和解委員会の赦し等にどれだけ感動したことか。ところが、本書は、その偶像を完膚なきまでに打ち壊す。ANCと共産党の深い関係、一貫した思想なく柔軟に戦術を駆使するだけの現実主義者、外交やセレブとの交渉にうつつを抜かし「日々の政務に興味を示さず閣議を頻繁に欠席」などを突きつけられ、聖人マンデラの偶像が崩れてゆく。それが本書の目的だと分かっているが、こりゃ困ったことになった…。2021/10/04
skunk_c
78
副題が本書の内容を的確に示している。アパルトヘイトの象徴的存在としての獄中生活(南アフリカのアパルトヘイトを非難するとき、真っ先に上げられたのが彼の投獄だったことを記憶している)から、解放され選挙で勝利していくまでの動きを、むしろ投獄前から見られた「柔軟なプラグマティズム」にあるとしている。それこそ使えるものは何でも使うしたたかさが彼の最大の特徴のようだ。支配者であった白人を敵視せずに自らに取り込んでいく不思議な魅力が彼にはあったように思える。だが彼の死後その柔軟さが生んだ曖昧な部分が綻びつつあるようだ。2021/07/28
樋口佳之
60
彼をたたえる理由として、二七年もの長いあいだ獄につながれていた点を強調する。たしかにそれは、想像を絶する体験だった。だが問題は、ソブクウェやビコその他無数の人々のなかで、マンデラの苦難が特別なものではなかった/そうした無数の人々の献身に、まずは頭を垂れるべきではとも感じました。2021/12/02
あきあかね
26
466/64という数字が、ロベン島の監獄でマンデラに与えられた番号だった。二十七年間という想像を絶する長さの獄中生活の後、アパルトヘイトの撤廃に尽力しノーベル平和賞を受賞、南アフリカで黒人初の大統領となった。 本書はマンデラの生涯の軌跡をつぶさに追い、時に「聖人」として偶像視されがちなマンデラの実像を浮かび上がらせる。世界史といえば西洋史と東洋史が太宗を占める中、自分がいかにアフリカの歴史を知らなかったかが分かる。 非暴力主義を唱えたガンジーやキング牧師などとは異なり、マンデラは武装闘争も辞さない⇒2022/02/23
崩紫サロメ
25
アパルトヘイトの撤廃、「虹の国」南アフリカの建設、と偶像化されがちなマンデラの評伝であるが、著者は南アフリカの白人を主な研究対象としており、良い意味でマンデラに「愛が足りない」(p.168)著である。マンデラの「偉大さ」は時代を超越した思想でもなく、ポストコロニアルな鋭さでもなく、「柔軟なプラグマティズム」にあると指摘する(p.157)。マンデラの非暴力主義はガーンディーの非暴力主義とは異なり、原則ではなく「戦術」の一貫であった(p.50)このようなしたたかさでなければ変え得ない国だったのだろう。2021/10/20