岩波文庫
耽溺

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  • サイズ 文庫判/ページ数 128p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784003113615
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

泡鳴(1873‐1920)は田山花袋らの客観描写にあきたらず,作中作者即主人公となって活躍するという一元描写の手法を用いて,自然主義作家の中でも特異の立場を占めた.本書は明治42年に発表された処女作.田舎芸者との愛欲耽溺の生活を描いたものだが,大胆素直な描法と生来の楽天的性格が相まっていわゆる自然主義文学のもつ暗さがない.解説=片岡良一

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

18
岩野泡鳴という名前は聞いた事もなかったけれどその泡鳴とかいう中2チックな名前、また耽溺とかいう香しい書名にやられて読みました。主人公のクズの開き直りぶりには脱帽です。作者のドヤ?が文の後ろからチラ見えしてなんだか微笑ましく非常にかわいらしい。この一冊で岩野泡鳴が大好きになりました。また岩野泡鳴好きとか言えば通ぶれそうな所も更に良しだし議論も吹っかけられなさそうで良いと思われます。解説文中の抽象概念についての単語は三島も「文章読本」で述べてましたが厳密性を欠いていて全体の解説が妙に上滑りになっています。2014/09/09

シロナガス西瓜

13
『馬鹿野郎!人の前でのろけを書きやァがつた、な。』/作家の男は、一夏を国府津に過ごそうとやって来た。しかし、次第に隣の芸者にのめり込んでゆく。/この主人公みたいなタイプの男、いるね。プライド高くて浮気性で嫉妬がオープンな、見てる分には面白い人ね。実際、女性からすると転がし甲斐のある可愛い男なのでは?妻子持ちでこれやってるのはまぁクズだけど。度々ユニークな場面があって、奥さんが直接迎えに来たのは痛快だったな。ヒス起こさず頑張って欲しかった。他にも、男が窘められた時の精神状態が幻影的に描かれていたのが印象深。2023/11/03

桜もち 太郎

9
グタグタな関係の作家田村と芸者吉彌。どうしようもない二人の物語。「デカダンは寧ろ不安を不安のままに出発するのだ」「耽溺が生命だ」。デカダン、嫌いじゃないしうらやましい気もする。人間本来の姿を表すと、こんな小説になってしまうのだろうか。何に「耽溺」するかが問題だ。でもこんな生活には犠牲者がでてしまうんだろうなぁ・・・ 2015/05/11

ふみすむ

9
「僕の胸はいちじくの果よりもやはらかく、僕の心はいちじくの葉よりももろくなつてゐたのだ」漱石の前期作品を讀んだ折にも思つたが、近代文學に登場する明治人はやはり近代人の服を着た江戸人も同然で、台詞なんかを見ると殆ど前近代のまゝである。自由主義的であり帝國主義的であつた明治の時代は、同時に封建性の名残を多分に残してゐた。この小説は近代化の途上にあつて尚、解放せられた人間が生きるには餘りにも容赦無き封建性を寫してゐる。描かれるのは封建的な社會的拘束を受けながらも、自由で放埓な自我として振舞はんとする人間だ。2014/07/24

ヒラオカキミ茸

5
「あたい、厭だ、わ!」みたいな濁点の付け方の理由は何だろ。太宰治の濁点の付け方と少し似てる。当人の喋り方の特徴を表したのか、本人の手癖か。◆岩野泡鳴の研究はどこまで進んでいるのだろ。2013/08/09

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