内容
建部賢弘は、徳川家宣、家継、吉宗に仕えた幕臣であったが、同時に日本の数学の基礎を作った関孝和とともに、江戸時代前期から中期にかけての最も優れた数学者の一人でもあった。たとえば、吉宗に献上されたといわれる『綴術算経』においては、円周率が当時世界でもっとも詳しい値として小数第40位まで書かれ、また円弧の長さが弧の高さの関数として無限級数の形で書かれている。このような活躍がありながら、建部の思想や業績などを詳細に解説した書籍はこれまでにほとんどなかった。本書は建部賢弘の時代・人・数学に関して詳細に解説し、理系、文系を問わない、多角的な視点を提供した。
第I部では歴史的側面、第II部では数学的側面、第III部では建部の数学思想および建部以降の数学を解説している。それぞれの興味あるところから読み始め、必要に応じて他章を参照できるように配慮した。