出版社内容情報
壮大な歴史ロマンを格調高い新訳で贈る。『クリスマス・キャロル』に次ぐディケンズの長篇傑作。
内容説明
ルーシーと結ばれロンドンで幸せな家庭を築いたダーネイだが、元の使用人を救うべくパリに舞い戻るや、血に飢えた革命勢力に逮捕されてしまう。彼の窮地を救うため、弁護士カートンは恐るべき決断を下す…。時代のうねりの中で愛と信念を貫く男女を描いた、ディケンズ文学の真骨頂。
著者等紹介
ディケンズ,チャールズ[ディケンズ,チャールズ] [Dickens,Charles]
1812‐1870。イギリスの作家
池央耿[イケヒロアキ]
1940年生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ykmmr (^_^)
118
ついに、『革命』が本格化。上巻にも登場した、『革命の象徴』でスタートを切る。『平等』という共通の目標に、市民は立ち向かって行くが、上巻での感想の通り、身分関係なく沢山の『犠牲』があった上で、それが成し得て行く事が果たしてどうなのか?現況にも問いかける一面であるのは、言うまでもない。自分たちの意思を成し得る為の『革命』が肯定か?否定か?作者の思いを読んで行こうとすると、皆、違う価値観も出てきて勉強になるのではないか?『正解』に『正解』はない。2022/08/15
セウテス
71
ついに革命は起こる。貯まりに貯まっていた民衆の怒りは、悲しみよりも憎しみを前面に押し出した。貴族どころか召し使いまでも、断頭台に送られていく。群集心理の恐ろしさは、行き過ぎの怖さを生む事だろう。前半で幾つも見え隠れしていた謎が、なんとも勢いよく明らかになっていく。悪役の様に描かれる人々も含めて、歴史の流れに逆らえなかったのだろう。時間や場所が登場人物により、頻繁に入れ替わる構成により、かなり密度の濃い物語になったと思う。結末は仕方がないのだろうが、本当にそれで良いのかという思いは、拭い去る事は出来ない。 2017/12/23
ころこ
36
市民革命の前提には「私=自我」の絶対的な中心点がある。並行してもう一つの革命である科学革命によって、人間は神にとって代わられる存在にもなる。同時に、人間は必然的に死すべき身体を持っていて、「私」の死後、世界がどうなるかという観念が「私」を支配する。この不安に苛まれる存在が、近代人と呼ばれることになる。他方で、市民革命が結実するもう一つの中心点は、人間が倫理をつくったことにもある。倫理によってダーネイはロンドンで問題とされなかったことが、パリでは亡命貴族の裏切り者として裁かれることになる。このことは本作で一2024/05/07
花乃雪音
35
チャールズ・ダーネイとシドニー・カートンの容姿が似ている設定を伏線にして見事に回収している。カートンは上巻における自己否定から下巻では自らの生涯を生かす道を見出し行動に至る、それは単なる自己犠牲とは別物に見える。マダム・ドファルジュの個人的憎しみから民衆の集団的憎しみまで描かれている。彼ら近視眼的な物の見方をする人々は時代を問わない人間を感じさせて色あせない作品にしてくれている。2020/09/05
syota
35
下巻の舞台は革命直後の混沌としたパリ。怒涛の展開で歴史冒険小説と言っていいかも。貴族たちの暴虐に対する民衆の怒りの爆発という、歴史の大きなうねりをうまく取り入れたことが、本作の大きな魅力だ。難を言えば、善人も悪人も類型的で、今まで読んだディケンズ作品に比べて魅力ある登場人物に乏しいけれど、プロットの面白さが(若干強引な部分はあるにしても)十分それをカバーしている。細かいことは気にせず、素直にハラハラ、ドキドキを愉しめばいいと思うし、実際たっぷり愉しめた。[G1000]2016/09/15