感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バグマン
2
柳田の弟子である千葉徳爾が、短めの文章を選んで読み解いていく。やはり古典を読む前に予備知識を知っておく必要があると実感。日本の民族に特有の感覚や世界観の変遷などを研究しつつ、その中から全人類に共有されている意識などを抽出しようとしていた。その方面の研究は十分に達成されなかったが、「新しい太陽」「サン・セバスチャン」には萌芽を見ることができる。現在と歴史の継続性を重視し、過去を美化する表層的な伝統主義も批判。柳田の民俗学は、実のところ政治史でしかない国史とは別の、日本民族の生活や感覚の歴史を記述し得る。2014/07/01
T・Shirai
1
「柳田の文章の多くは…事実の記載と自らの推論とを叙述するに止まって、結論を差し控えているために、今日の知識と状況とをふまえて考えると、かえって意外な着想の妙と新たな展開の端緒とを、その行間に見出すことが稀ではない。少なくとも思考すべき何かの問題を抱えている者にとっては、意想外の貴重なヒントを得られよう。」なんていう文章を読むと目が開かれる思いがする。これから柳田の文章を読むときのひとつの手がかりとなる。あと、『秋風帖』の松平と杉平の解説も妙味がある。2017/03/28
