内容説明
“1945年8月6日、広島の上空で約45分間旋回した後、僚機エノラ・ゲイ号に向けて、私は「準備OK、投下!」の暗号命令を送りました。…”後年、地獄火に焼かれる広島の人々の幻影に苦しみつづけ、“狂人”と目された“ヒロシマのパイロット”と哲学者との往復書簡集。それは、病める現代社会を告発してやまない。ロベルト・ユンクの精細な解説「良心の苦悩」を付す。
目次
未来図の象徴という断罪
原子力時代の最初の犯罪
ボブ・ホープの映画化計画
日本からの多くの手紙
原子兵器反対のリーダーに
平和運動をさまたげる弟
禁止措置はとれないか
クロードは責任回避を拒絶したのです
トランキライザーに参っている
15年目の広島記念日
広島上空で私がしたこと
ポーリング博士を救おう
私信も検閲にかかっている
20世紀のドレフュス事件
ラッセル卿のイーザリー観
僕はけっして勇気を失わない
釈放の日は目前だ
良心の苦悩〔ほか〕
感想・レビュー
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owlsoul
7
エノラ・ゲイを広島上空へ先導し、原爆投下の命令を下したパイロット、イーザリー。後に広島の惨劇を知った彼は、自分を英雄視する社会に疑念を抱き、良心の呵責に苦しむ。しかし、イーザリーの自責の念は原爆投下の是非を問うものであったため周囲には受け入れられず、やがて彼は精神病棟に隔離された。そんなある日、彼は名も知らぬ一人の哲学者から一通の手紙を受け取る。「あなたの存在は人類の慰めであり、希望です」国家によって押し付けられた巨大な罪を個人で受け止めようとするイーザリーと、その苦悩に寄り添い続けた哲学者との往復書簡。2023/08/15