内容説明
役にも立たない帝王学だけ教え込まれて育ち、恋も政治も知らぬ幼児のような王様ストンコロリーン28世。オッパイを見ては、「あ、オレンジ!」などと呟いていたおく手な彼が、私腹を肥やす悪辣な総理大臣への反感からおこった革命の渦中で、すこしずつ人間の喜怒哀楽に目ざめ、純真な恋を感じ始める…。ペーソスとナンセンスの横溢する、おとなとこどものための童話シリーズ第一作。
著者等紹介
北杜夫[キタモリオ]
1927(昭和2)年、東京青山生れ。旧制松本高校を経て、東北大学医学部を卒業。’60年、半年間の船医としての体験をもとに『どくとるマンボウ航海記』を刊行。同年、『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。その後、『楡家の人びと』(毎日出版文化賞)、『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)等の小説を発表する一方、ユーモアあふれるエッセイの執筆も多い
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感想・レビュー
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たか
49
おとなとこどものための童話『さびしい』シリーズ三部作の第一弾。帝王学だけ教え込まれて育ち、恋も政治も知らぬ幼な子のようなストン王国の王様・ストンコロリーン28世。私腹を肥やす悪辣な総理大臣への反感から起こった革命の渦中で、少しずつ人間の喜怒哀楽に目覚め、純粋な恋を感じ始める…。 ▼寂しくて、まったく自由がなくて、それでも自分の感性と優しい心を持っている素敵な王様の心温まるお話。Bー評価2021/11/29
フジコ
17
まえがきがとても長く、あとがきもそこそこ長く…。まえがきから飛ばしまくりな北杜夫さん。至極ハイテンションな北杜夫さん。行け行けGO!GO!な北杜夫さん。もはや誰も止めることの出来なかったのであろう、はち切れたテンションの北杜夫さん。後半になればなるほど疲れが見えてきます(笑)。よっぽど楽しかったのか。ユーモアと呼べる域を超え、ふわふわ飛んで行ってしまったのか。書く筆が止まらない北杜夫さんの姿が目に浮かびます。最後の反省文を読み、私はこの作品を読んだ感想として、怒れずに、やはり愛すべき北杜夫さんなのです。2013/02/04
つねじろう
15
中学時代からの宝物。この本でオレンジジュースが好きになった。
双海(ふたみ)
12
平和で前近代的なストン王国に突如おこった革命、幼児のような王様の波瀾の逃走行と恋のめざめ――おとなとこどものための童話。2014/10/07
ノコンギク
9
昔読んだ。とても面白かった記憶。大人になってしまったからかな、昔読んだ時ほど面白く感じなかった。時代性を差し引かないといけないとは思うけど、こんなだったかなと。シャハジポンポンという名前は記憶の隅に残っていた。そうそう、こんな名前だった。ほんとうに純粋な王様が、ストン国を平和に導く日が早く来ますようにと思いつつ読んだところ…えええ?という終わり。あとがきで多少フォローがあるかと思ったが、あってもなくてもいいあとがき。これが北杜夫流かも。船乗りクプクプからファンになった北杜夫「幽霊」を読み直したくなった。2018/10/09