内容説明
この世界はすべて心の中の観念からなる?!バークリやロックの議論を現代的問題に接続するゆかいな哲学対話。
目次
第1章 記号としての世界(オックスフォード駅で;バークリの生涯;神の存在証明 ほか)
第2章 観念論(クライスト・チャーチ;なぜ心の中の観念なのか;エッセ・イズ・ペルキピー ほか)
第3章 歪んだ論理(学会最終日;物そのものと観念;ロックの中の「エッセ・イズ・ペルキピー」 ほか)
著者等紹介
冨田恭彦[トミダヤスヒコ]
1952年、香川県生まれ。1975年、京都大学文学部卒業。81年、同大学院文学研究科博士課程単位取得。現在、京都大学教授、哲学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
8
観念論についてはよく知らなかったのでこれで入門した。バークリの記号としての世界、物質批判論とロックの物質肯定を分かりやすく解説しつつ比較し、両者に共通する問題として志向性をあげている。最初はバークリ推しのロック下げに見えながら後半でそれもひっくり返し、両方から問題提起を受けとるのは上手い。バークリの観念論というと古く見えるが、現代の科学哲学や分析哲学にも通じる問題提起があるんだなあ。バークリを論駁するために石を蹴るって、脱構築主義者を物理的パンチで粉砕みたいな発想をする人が昔からいて吹く2012/08/08
chanvesa
7
『方法序説』にしろ、本書の終わりの方(197頁)にしろ、観念論が現代の問題につながる重要な提起をしているように感じる。人間工学やロボットの研究、宇宙物理学とか、最先端の科学が進めば進むほど、人間の知覚や取り巻く世界が、あやしい不確定な土台の上に建っているとしか思えなくなる。「この世界は因果的ではなくて記号的なものではないか」ということばからさらに議論を深めてほしかった。2014/04/26
れ
5
古典経験論に関する極めて優れた入門書。新書ではあるが議論を丁寧に追おうとするとかなり大変。バークリの観念論がロックの物質肯定論を歪めてしまった、という箇所は少々驚いた。参照用に買っておきたいな……2014/05/26
Esmé
3
最終章が難しかった。2時間で読むはずが一ヶ月以上持ち歩く羽目に。この分野の勉強不足を痛感する。めげずに読み続けよう。以下、覚書。観念と物との関係はデカルトの心身二元論の問題構造と等しく、バークリはその解決?として、立論時に前提したはずの「外部」を最終的に否定し「内部」のみを認める。ただし、この問題を解決するもう一つの可能性として、志向性が示唆されている。2012/07/28
Sleipnirie
2
物質というの存在せず、五感で感じること、物質の性質とされる色・形・大きさ全て心のなかの観念であるというバークリの物質否定論を会話劇で解説。 物質肯定論者の代表ロックの考えを依拠しつつ批判を展開。批判対象のロックよろしくないのねと思いきや、面白いのはバークリはロックをちゃんと理解せず、その論を歪めたまま批判を展開しているという点。2015/11/04