出版社内容情報
平安末の後宮に咲いた艶麗な花・璋子の波瀾の生涯を、精緻な考証によって描いた伝記。崇徳・後白河天皇の生母としての悲傷に彩られた生涯は、「兄弟血で血を洗う」といわれた保元・平治の乱の謎を解く秘められた鍵でもあった。年譜つき。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sofia
46
古い本だが、すごいものを読んでしまった。BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」のスペシャルを見て。著者の愛と執念による待賢門院の伝記。璋子の生理周期からの崇徳天皇叔父子説のすごさ。(健康だから28日型とか人それぞれだけどね)ただ単純に鳥羽上皇が叔父子と崇徳天皇を嫌いすぎていたわけでもなく、白河法皇と通じていた璋子も愛していたという、現代では考えられない天皇たちの超越した価値観はおもしろかった。白河法皇に育てられた璋子もまた2人の関係に悩むわけでもなく超越していたのか。2020/07/13
るぴん
37
図書館本。読友さんの感想から。いやー、凄い‼︎待賢門院璋子の生理周期と行動や滞在場所から、「叔父子」崇徳天皇は事実白河法皇の子どもだったことを証明した、著者の執念とも言える熱量に圧倒される。まさか待賢門院も、死後千年も経ってから自分の生理周期が世に晒されるとは夢にも思わなかっただろう(^_^;)当時の貞操観念は今とは違うこともあるが、鳥羽天皇も璋子を愛していたし、璋子の方も、鳥羽天皇も白河法皇も同時に愛することができる人だったらしい。当時の人々からも異常と見られていた白河法皇に育てられたからこそ、→2020/08/13
maekoo
13
平安時代後期の宮廷や文化・政治状況を知る上で璋子の生涯を知る事は有意義です。 白河法皇と璋子の文化サロンであの源氏物語絵巻が製作された様な文化的素地と、時の最高権力者との関りの中で取り入ろうとする者達による荘園の寄進の集中や力を持った者の妻や娘が女房として侍した璋子の波乱に満ちた生涯を読み取れます。 考古学と文献学を融合させた古代学を創設した角田教授らしい膨大な文献を分析し個々の人物達の心理面まで読み解いた硬派な論文は読み応えがあり一定の知識を持ってから読む事をお勧めします。(年表補注だけで46ページ)2023/09/17
真理そら
6
白州正子『西行』、辻邦生『西行花伝』を読む前の予習として読んだ。同じ著者の『平安の春』と同様に研究者らしくない読みやすい文章で書かれているので楽しく読めた。「叔父子」と呼ばれた崇徳天皇の不運を知らないまま逝ったことなど待賢門院の一生は後半もそれほど不運ではない。崇徳が白河の子であることの検証などもよくぞここまでと呆れるくらい綿密で、思わず納得してしまう。法金剛院蔵の待賢門院画像では美人度はピンとこないがそこはかとない色気や母性は伝わる。2017/11/23
槙
4
再読。「雨月物語」の崇徳上皇に震え上がって彼女に興味をもち、白洲正子の「西行」でこの本を知った。美人で健康で気丈なお姫様が平安末期の戦乱の遠因になり、最後には讃岐で崇徳上皇が憤死することになるわけだけど、彼女を嫌いになれない。初読の時に日本史上で一番の悪女は彼女なのではと思ったけど、再読してみて本人に悪気はないのに周囲に色々波乱を招く日本には珍しいファム・ファタルって気がした。2014/07/19