出版社内容情報
表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(一四七八―一五三五)の造語である.モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で,国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている.社会思想史上の第一級の古典であるだけでなく,読物としても十分に面白い.
内容説明
表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(1478‐1535)の造語である。モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている。社会思想史の第一級の古典であるだけでなく、読みものとしても十分に面白い。
目次
第1巻 国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロデイの物語
第2巻(国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロデイの話。ユートピアの叙述、ならびに同島のよき政治、よき法律制度についての詳細なる解明を含む;都市、特にアモーロート市について;役人について;知識、技術および職業について;彼らの生活と交際について;彼らの旅行、および巧みに説かれ、賢く論ぜられたことども;奴隷、病人、結婚その他;戦争について;ユートピアの諸宗教について)
トマス・モアよりピータ・ジャイルズへの手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
79
アン・ブーリンと結婚し、男子を得たいがためにイスパニア女王との婚約を破棄しようと英国国教会を創設したヘンリ8世を諌めて斬首されたトマス・モアが記した「来たるべき理想郷」。「ユートピア国」のことをモアに知らせたのが癒しの天使の名を持つラファエロというのが示唆的。但し、20世紀に入り、社会主義や全体主義などの台頭や啓蒙主義の齟齬で「全ての人民の幸福の実現」という目的が手段に成り下がった時に『蠅の王』、『素晴らしき新世界』、『1984年』などのディストピア小説が英米作家から生まれたのは皮肉としか言いようがない。2014/09/18
Willie the Wildcat
72
共同生活体における共有の精神と可視化。教育、経済活動における機会均等。結果、私有財産、貨幣制度が不要となる共同体。最低限のルールとしての罪と罰の有効性を問う。一方、傭兵、奴隷、土地を巡る原住民との関係などが、どうにも植民地政策を彷彿。「どこにも無い」から理想郷であり、理想故にToBeModelという訳ではなく、当時の帝国主義と人間の欲への皮肉に映る。踏まえた人類の理想郷の追及。結局、問題なのはイデオロギーではなく、人間の欲という印象。嗚呼、悲しい性・・・。(汗)2016/01/11
あーさん☆転スラ·薬屋·本好き·魔導具師ダリヤ·天久鷹央と続々アニメ最高です!!(≧▽≦)
64
1957年初版。1992年52刷。訳した方が、平井正穂氏。古いせいか文体も古く読みヅライ。字も小さくて困る( ̄~ ̄;)2019/08/12
やいっち
62
今 読んでる本でブルーノやモンテーニュ、ルクレティウス、エピクロス……等に改めて思いを至らせている。このトマス・モアも その一人。「ユートピア」それは甘き夢ではない……では見果てぬ夢なのか……再読必須。
催涙雨
56
シャングリラと並んで理想郷の代名詞であるユートピアという単語の出処。その内情は私有財産を認めないわかりやすい共産主義社会。特権階級の人間のみが私服を肥やし民草を顧みないことを憂い、本格的な平等を志すような内容なので歪な部分を含みながらも感覚としてはおおむね同調できるところが多い。私有財産という目的意識が奪われては仕事に身が入らなくなると思うところだが、公共の利益が全体の目標という一応の回答は用意されている。なんにしても、こういう世界を目指すには何代にもかけて観念的に教化する必要があり、既存の観念のなかで生2019/11/01