出版社内容情報
著者は,中世アラビアで生まれたこのイスラームの聖典を,一つの「言語テクスト」として扱い,語の潜在的意味連関やテクストの発展史とレトリックの表現レベルとの関係などに重点をおいた新しい解釈学をこころみる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tieckP(ティークP)
5
専門家におススメされて読んだのだけれど、さすがは井筒俊彦という感じ。「コーランを読む」という10回のセミナーで、予告では「最初の7行だけ読みますよ」と言う。「え、たったの7行」と思ってこの本を読み進むと、1つの行からどこまでも解説を膨らませコーラン・イスラーム・アラブ民族といったバックグラウンドについて縦横無尽に(そして多少は天才らしい独断も交えて)語りつくす。終わってみれば、第10回に、後ろの3行を駆け足で消化することに。分厚いからあっという間にとはいかないけれど、この奥深さに気安く招いてくれる良著。2012/10/27
の
1
コーランについての全十回の岩波講座セミナーを文章化したもの。タイトルからだとコーラン全体の解説をしているように思えてしまうが、中身は7つの節で構成された第一章の「開扉の章」を徹底して読み解くといったもの。イスラームの根本経典であり勿論アラビア語で書かれているのですが、言葉の確かな意味を分からなくても韻が踏んである文章は美しいと思わせてしまう程の力を秘めています。その宗教観について詳しく述べるのは難しいですが、井筒氏の哲学的考察が面白く、学問の一部としての経典の在り方を提示できているように思えました。2011/04/17