出版社内容情報
溪内 謙[タニウチ ユズル]
著・文・その他
内容説明
既成の価値体系が大きくゆらぎ、未来への不透明感がつのる現代。いまこそ、時論の安易な追随におちいることなく、変動の深層にある歴史的文脈を見すえる知的営みが必要なのではないか。ロシア現代史研究の第一人者が現代史を学ぶことの意義と方法を、長年の経験をふりかえりながら説き明かす。情熱みなぎる歴史学入門。
目次
第1章 過去、現在そして未来(なぜ過去を知るのか;歴史は過去の事実の記憶か ほか)
第2章 テーマ(テーマを決める;テーマの発端―社会主義像を問い直す ほか)
第3章 史料(材料としての史料;史料状況の推移 ほか)
第4章 文章化(一般化―その限界と意味;歴史の推論の特性 ほか)
著者等紹介
溪内謙[タニウチユズル]
1923‐2004年。1947年東京大学法学部卒業。専攻、ロシア現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
29
現代史を紐解いていくのでなく、どのように歴史、現代史を学んでいくかを説いているhow to 本のような内容。著者はロシア現代史の研究家。EHカーとも面識があり、その世界へ入ったという。歴史は好きだが、かなり専門的なため、その道を志している人の為の入門書のような本。2019/05/10
寝落ち6段
16
大学時代に、史学を学ぼうとしたが、どの時代を専門にするのか迷った時に教授がこの本を読めと仰った。我々は必ず未来に向かって生きている。だが、生きて行くための指針は、過去を学ばなければ得られない。学んだ過去から、未来のために何を得られるのかを考えなければならない。「知って面白い」と思うことでさえも、現在と過去を比較するから得られる感動だ。現在に最も近い歴史区分は、現代史である。現代史は、現在の問題に直結し、未来に直行できる。そう思った私は、世界史、特にドイツを中心とした現代史を学ぶことに決めた。思い出深い本。2021/05/24
Toska
12
他者が食事をとっても私が満腹するわけではないが、精神生活においては人類共通の体験から利得できる。「新史料」自体の内容よりも寧ろ、いかなる問題関心を抱いてこれに臨むかが重要。歴史家が生きる時代の変化を受けて「既知」のテーマが「未知」に変化することはあり得る。研究対象への知的な距離感。史料を選択・構成・批判するということ。等々、歴史を単なる静的な存在と見るのではなく、歴史家の主体的・能動的な活動を何よりも重視するアグレッシヴな歴史論。「歴史の終わり」なんてちゃんちゃらおかしい、という気概を感じる。2022/11/07
おらひらお
8
1995年初版。ソ連(ロシア)史を専攻する著者による現代史入門書です。もちろん、自分自身の歩みや研究法なども参考として提示されますが、やはりソ連崩壊の衝撃は大きかったようですね。結構、付箋だらけになった一冊です。2014/08/17
harass
8
ロシア農村研究を専門にする著者が自らの経験と共に歴史についてを語る。ソ連崩壊後のロシア研究の状況や歴史哲学が述べられて当事者としての困惑が感じられる。後半歴史家の研究方法など具体的に語られている。歴史家入門のような内容だ。こういうのを知ると歴史小説の「作家の想像力」は全く相容れないものであると感じる。歴史家には異質で全く許せない身勝手な想像力だと納得した。執拗で厳密な読み込みは気が遠くなりそうだ。特に現代史はマスコミの発達で一次資料が膨大なものなのだという。著者によると一番重要なのは当時の新聞だという。2013/05/09