感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mawaji
9
先月の日経朝刊で吉行和子「私の履歴書」の三兄姉妹のエピソードがとてもおもしろかったので手に取った初吉行理恵。タイトルからそのまま詩の本編になだれ込んでループするような構成が特徴的で、巻末の作品論・詩人論にあるような独特な世界観を表現しているように思われました。「常に自己否定を道連れに」して「人間とつきあうのは苦手」な著者の随筆は姉の「私の履歴書」に述べられていたとおりで、詩と同様に昭和の匂いがプンプン漂うものでした。「レット・イット・ビー」がリバイバルで上映されていた銀座の映画館、どこだったのでしょう…。2021/06/16
sk
8
淡々と断片的でありながら鮮やかな情景を浮かばせる作品群。エッセイが結構面白かった。感覚的に語ることを得意としながら感覚に淫しない。不思議な魅力がある。2016/05/29
misui
7
「国防色の籠の中で/赤ん坊猫のお腹から はらわたがとび出しています」(「圧死」) 静かな狂いを感じさせる幻想が訥々と語られる。この「訥々」というところがポイントで、改行や連の区切り、内容の飛躍が不安を堪えながら言葉を絞り出すような語り口を生んでおり、いつこの精神が崩れてしまうのだろうかと不穏な空気が漂っている。それに加えてですます調が多く用いられているのが狂気を必死に抑えつけているようでもあって、詩はメルヘンの色を帯びる。寡作とのことで収録数は少ないが素晴らしい詩人を見つけた。2015/01/28
komamono_rimi
2
ものすごく好きだ。欠点すらも。この資質に。自分の趣味を露呈しているかのようではずかしいが、そんなこともうどうでも良い。それぐらい強烈に惹かれてしまった。2009/12/22
たなしん
1
安岡章太郎も書いているように「体質しかない」詩だと思います。だからその体質を楽しみましょう、終わり、みたいな。詩論を書こうとして恋文になっちゃった随筆がこの人らしさのすべてかもしれない。同じモチーフが同じように繰り返されながらも、退屈しない感覚が素敵だと思う。えっと、全体的に少女がノートに書き溜めていた詩のような感じですね。それが蒸留され、紙面いっぱいにぶちまけられたような、そんな瑞々しさと美しさに浸れます。小説は、芥川賞作家のわりには、たどたどしい感じがしました。それすらもまた、魅力ではありますが。2011/02/17