感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
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「太陽! つきとほる高さから/そらのすっかりが ただ/ひといろに透過してくるとき/おほらかに澄みわたった空層にわれらはあひこたえる/精神としていきのこる」(「火山 3」) ヨーロッパと日本の近代詩風の書法を用いて風景と精神の交感を描く。宮沢賢治の影響大なのだろうけど、性愛を描いていたりして賢治よりもう少しヨーロッパの香りがする。美しいけどいまいち入り込めなかったな。2014/06/15
Cell 44
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「ふしぎな国の空間で/ぼくは/まっしろに氷った階段にたちつくした/つららがぴしぴし/聳える寺院の/ばら窓に コントルフオォルに/氷った瀑を垂らしてゐた……//氷のいちご 青いいちごをめしあがれ//氷のいちご 青いいちごをめしあがれ」(「きさらぎの唄」)「心臓がだめだから換えるのですよ/とりかえた心臓がいうことをきかないから/胆嚢を切りとるのです/血がどうしても謀反をおこしたがるので/脾臓をとる やがてもうからっぽの腹腔から/無名のものがとり除かれることになります」(「聖なるかな」)寒色のイメージは美しい。2015/03/11
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再読。現代詩文庫を読み返していて、読んだ当時の印象とは当たり前だが違ったものになっているのを実感する。生野幸吉にしても、読んだ時は余り印象に残らなかったが、こうやって読み直してみれば、外界との不調和を理知的な感性によって包摂/解消しようとする「拗体」(川村二郎)の詩法によって作品を構成しようとしたことが見えてくる。ただ、それが閾値に触れた時、「おののき」としか呼べないような瞬間をドキュメントとして写し取ってしまうこと、同時にそれが神的な存在を指し示してしまうこと、そこが興味深い。2021/09/07