出版社内容情報
世紀末ウィーンからケンブリッジ、『論考』まで。今世紀最大の天才の実像に初めて迫る決定的伝記。
六年前に出た本だが、買っただけで読んでなかった。読んでみたら、これが面白い。驚くほど多くの新資料を使いこなして、これまでになく深くて詳細なウィトゲンシュタイン像を描いており、決定版の名に恥じない作品である.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』315頁、より)
内容説明
決定的伝記。世紀末ウィーンと家族/工学の勉強/数学の哲学への興味/ラッセルの弟子/ラッセルの先生/志願兵として前線へ/『論理哲学論考』/片田舎の小学校教師/建築への情熱/再びケンブリッジへ。
目次
1 一八八五―一九一九年(自己破壊の実験室;マンチェスター ほか)
2 一九一九―一九二八年(印刷されない真理;〈まったくの、田舎の環境〉 ほか)
3 一九二九―一九四一年(二回目の来訪;〈検証主義者の様相〉 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
25
真実/嘘をめぐる哲学を幼少期から言葉にしていたということを知り、それはもちろん意図的なものではなかっただろうがやはり恐るべき知性の持ち主だったのだなと思わされた。師であるラッセルとの時に愛され、時に反発した複雑な人間関係。戦争と貧乏暮らし。教師時代に行っていた体罰の記録まできちんと記してあるあたり、闇雲にウィトゲンシュタインを美化しようとしない姿勢が見えて好感を抱く。彼の哲学を知る上ではこの本はどうかな、と思うけれど性欲にまで踏み込んだ記述と、それをセンセーショナリズムで塗り固めない筆致は買いではないか?2020/01/05
ステビア
23
間違いなく第一級の伝記。ただ、普通に読めるレベルではあるものの、翻訳があまりよくない。「誤訳では」「よりよい訳語があるのでは」と思われる箇所が散見された。2022/09/18
脳疣沼
2
ウィトゲンシュタインの哲学が分からなくともその生き方に感動できる本。かなり分量が多く読むのが大変だが読む価値はある。ウィトゲンシュタイン関連の本は多いが、伝記ものとしては外せない本。ただし、哲学自体は他の本で勉強しないと理解できない。2018/01/03
iwasabi47
1
ウイーン世紀末で大金持ちでエキセントリック、『天才か、さもなくば死』、ナンセンスギャグ好きで、何かの話に出てきそうなルートヴィヒ。彼は鋼鉄の嵐の下で『論考』を書き綴る。彼の著述は難解だが、彼が著述されなかった事・背景を窺うと判るかもしれない。『性と死』の影響含めて、ユダヤ系の彼が当時の反ユダヤ言説に対して、今の私達には理解し難いアンビバレントな感情を持っていた事、以前読んだマロリーらのエレベスト遠征『沈黙の山嶺』の内容(ブルームズベリーやww1の影響)と重なる所など面白く、天才も人の子だなと思った。2017/01/06
ピエロ
0
天才の責務=義務という副題が全てを物語っている。上巻は幼少期、ラッセルとの関係、『論考』の制作と出版、挫折を詳らかに書いている。特に面白かったのはウィトゲンシュタインの恋愛≒友情を持ち合わせて、スキナーやマルガリートへの感情が繊細で、人一倍傷つきやすく、人一倍愛を求める姿が超人に祭り上げたら感のある人間性を等身大に近づけている。さて、下巻へ。2012/03/06