内容説明
鎌倉・南北朝時代の歌僧。出家後、二条為世に師事、二条家歌学を再興。為世門下の和歌四天王の一人に数えられた。二条良基の質問に答えた『愚問賢註』等を残す。その和歌は典雅端正、温和な歌が多く、当代、室町時代以降の多くの歌人たちが見習うべき手本とされた。その代表作を厳選して紹介。各歌には現代語訳をつける。振り仮名つきで読みやすい丁寧な解説つき。歌人略伝・略年譜を付し、それぞれの歌人についてより深く知るための読書案内付き。
目次
あらたまの春立つ今日の
玉島やいく瀬の淀に
鴬の声よりほかは
影映す岩垣淵の
見るままにさざ波高く
立ちならぶ花の盛りや
初瀬山桜に白む
山里は訪はれし庭も
世の中はかくこそありけれ
咲きにけり八十宇治川の〔ほか〕
著者等紹介
小林大輔[コバヤシダイスケ]
1969年静岡県生。早稲田大学大学院満期退学。現在、早稲田大学本庄高等学院教諭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
97
日本語の中にある美を最大限に引き出した歌の数々に圧倒されて、胸が震えた。なんて美しい歌を読む歌人だろうか。頓阿のことは全く知らなかったので、新しい美の世界が自分の目の前に開けた感じで本当に嬉しい。鎌倉時代から南北朝時代にかけて活躍した歌人で、僧侶でもあった。「月宿る沢田の面に伏す鴫の氷より立つ明け方の空」月の光に照らされた冷え冷えとした情景の中に光が差し込んできて、鴫が飛び立つ姿は、清冽な日本画を見るよう趣がある。この歌に感じられる寂の感覚は、芭蕉に受け継がれているのではないだろうか。2017/10/27
山がち
2
歌からは為世門下とは思えないような新鮮味を感じる。なだらかで美しく、それでいて新鮮というのは確かに二条派の中のある種の理想的なもののようにも感じられた。ただ、個人的には心敬のような「月宿る沢田の面に伏す鴫の氷より立つ明け方の空」の歌が一番読んでいて面白かったので、そういう点では本当に頓阿が好きなのかと自問しなくもない。「影映す岩垣淵の玉柳深くなりゆく春の色かな」「ふくる夜の川音ながら山城の美豆野の里に澄める月影」など陰影に情景を重ねた歌などが特に心地よく、静けさの表現や新鮮な語句も実に素敵な歌人だと思う。2014/05/14
むう
1
名前しか知らなかったが、偉大な歌人だということが分かった。興味深い。2012/04/08