出版社内容情報
★第8回大仏次郎論壇賞を受賞。
内容説明
うっかり足をすべらせたら、すぐさまどん底の生活にまで転げ落ちてしまう。今の日本は、「すべり台社会」になっているのではないか。そんな社会にはノーを言おう。合言葉は「反貧困」だ。貧困問題の現場で活動する著者が、貧困を自己責任とする風潮を批判し、誰もが人間らしく生きることのできる「強い社会」へ向けて、課題と希望を語る。
目次
第1部 貧困問題の現場から(ある夫婦の暮らし;すべり台社会・日本;貧困は自己責任なのか)
第2部 「反貧困」の現場から(「すべり台社会」に歯止めを;つながり始めた「反貧困」)
強い社会をめざして―反貧困のネットワークを
著者等紹介
湯浅誠[ユアサマコト]
1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1995年より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。現在、反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
163
格差社会ではなく、滑り台社会というのが言い得ているような気がする。 昨日まで、大企業で威張っていた人が、企業の選択の誤りによって、失業手当を受けることになる。 そういう滑り台が、世の中のあちこちにある。 運よくすべりおちなかったか、運悪くすべりおちてしまったか、 その差が一番おおきいのかもしれない。 現代社会の一面を、するどく描写しているよう。岩波新書百一覧掲載http://bit.ly/10CJ7MZ2013/06/27
ずっきん
83
貧困問題の可視化と、社会システムでの救済を目指すという主張の論理性とそのわかりやすさ、非常に優れた良書である。十年以上前の著作なため、その後の検証などは必要だが、今でも日本の貧困問題について語る時の土台になるというのも納得。「衣食足りて礼節を知る」「貧すれば鈍する」の言葉の意味を、背景を、読書人ならではの想像力を最大限に駆使して感じ取れ。著者の活動は、頭の片隅でずっと私自身のセーフティネットだ。行政すべてを批判するものではない。だが、私を大きく支えてくれているのは、著者のような人々の存在なのは確かである。2020/11/30
s-kozy
67
日本のセーフティーネットは三段階。①雇用のネット、②社会保険のネット、③公的扶助(生活保護)のネット。雇用状態が不安定だと①から溢れると②にも落とし穴があり、「自助努力の過剰」状態では申請できる当然の権利も行使できなくなり、「最低限度の生活」が営めなくなってしまう。それがこの国の「すべり台社会」。この本の発行は2008年。しかし、非正規雇用の割合の多さはむしろこの10年で悪化している。我々は、私はこの10年で何を選択して来たのだろうか?暗澹たる思いにさせられる。良書。2018/02/19
佐島楓
63
読んでいて無力感ばかり覚えた。このような貧困状態に誰しも簡単に陥る可能性がある国となってしまった日本。状況は改善されるどころか悪化しているように思う。もう自己責任とばかり言えない世の中になっているし、社会システムを何とかしないといけない。でも政治や行政は力になってくれないというジレンマ。2016/02/22
kinkin
58
貧困の背景はなにか、政府の取り組み、人々が貧困問題についてどのように立ち向かうかということを言及した本。現在の日本は一度転んだらどん底まですべり落ちてしまう「すべり台社会」であると書かれている。すべり台の角度も急になり、すべりやすいうえに、上るための階段さえ取り払われる状況になりつつあること。まじめに働いてさえいれば、そこそこ生活出来た時代はなくなって、自己責任という言葉だけが一人歩きしているように思う。貧困を全く無くすことは無理にしても、まずはもうワンランク上の生活が出来ることを目指すべきと感じた。2014/10/14