出版社内容情報
アイヌ女性の青春遺稿。「とこしえの宝玉」(『アイヌ神謡集』)をたった一粒残して短すぎる生涯を逝ったアイヌ女性の美しい魂の記録。
本書の著者は1922年(大正11)19歳の若さで心臓病のため亡くなったアイヌの天才少女で、著名な言語学者知里真志保氏の姉に当たる。同書は彼女の手紙と日記を編集したもので、キリスト者としての魂の成長が美しい文章につづられ、胸をゆさぶられる。金田一京助氏から上京を勧められ、19歳で金田一氏宅に寄寓。4カ月後に死亡するが、金田一氏は、著者が同氏宅に滞在中に記していた日記を死ぬまで秘蔵していた。金田一氏が記した次の文は、著者の信仰をよく表している。「幸恵さんの短い生涯は実に露にぬれた真紅の花びらのように見えます。あらゆる不幸な人々を心の底から傷んで、祈り続け、自らは始終涙に濡れながら、ただ人の幸福のために生きて行かれたその半生、本当に感謝と祈りとの殉教的生活であったのです」(キリスト新聞 1984.5.5)より
口絵梟の神の自ら歌った謡 礎稿
神林に惜しまれた宝玉-知里幸恵略年譜
『アイヌ神謡集』序
手 紙
知里幸恵写真帖
日 記
アイヌ神謡集序
其の昔此の広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました。天真爛漫な稚児の様に、美しい大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活してゐた彼等は、真に自然の寵児、何と云ふ幸福な人だちであったでせう。
冬の陸には林野をおおふ深雪を蹴って、天地を凍らす寒気を物ともせず山又山をふみ越ぇて熊を狩り、夏の海には涼風泳ぐみどりの波、白いの歌を友に木の葉の様な小舟を浮べてひねもす魚を漁り、花咲く春は軟かな陽の光を浴びて、永久に囀づる小鳥と共に歌ひ暮して蕗とり蓬摘み、紅葉の秋は野分に穂揃ふすゝきをわけて、宵まで鮭とる篝も消ぇ、谷間に友呼ぷ鹿の音を外に、円かな月に夢を結ぶ。鳴呼何といふ楽しい生活でせぅ。平和の境、それも今は普、夢は破れて幾十年、此の地は急速な変転をなし、山野は村に、村は町にと次第々々に開けてゆく。
太古ながらの自然の姿も何時の間にか影薄れて野辺に山辺に嬉々として暮してゐた多くの民の行方も又何処。僅かに残る私たち同族は、進みゆく世のさまにたゞ驚きの眼をみはるばかり。而も其の眼からは一挙一動宗教的感念に支配されてゐた昔の人の美しい魂の輝きは失はれて、不安に充ち不平に燃え、鈍りくらんで行手も
アイヌ民族の主張がよく解る美しい文章
感想・レビュー
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Yuko
ぼちぼちいこか
ymazda1
ゆかり
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